2009年01月02日

沼地のある森を抜けて 梨木香歩

出版社 / 著者からの内容紹介
始まりは「ぬか床」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を伝える書下ろし長篇。


「先祖伝来のぬか床」から始まる物語は、
「いのちの繋がり」を素晴らしく、恐ろしく描いている。
梨木香歩独特の世界観ではあるけれども、
これまで読んだどんな作品より、作品そのものに重みがある。
間に挟まれる「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」
で、少しずつ気分を変えて読んでいかないと、吐きそうになるほど。

自分にのしかかる、これまで何代・何十代もの命たち
これを呪縛と捉えるか、進化と捉えるか・・・
物語は、明るく終わっているが、
読み終えた後、まだなんとなく、重みを感じ続けてしまう。
すごいパワーで書かれた作品なんだろうなと思う。

沼地のある森を抜けて (新潮文庫)沼地のある森を抜けて (新潮文庫)

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2007年08月05日

村田エフェンディ滞土録 梨木香歩★★★

出版社/著者からの内容紹介
はるかな友たちよ、万のちいさき神々よ、人生の宝石なる時間よ−−
1899年、トルコに留学中の村田君は毎日議論したり、拾った鸚鵡に翻弄されたり神様の喧嘩に巻き込まれたり……それは、かけがえのない青春の日々だった。だが……梨木香歩が21世紀に問う、永遠の名作青春文学。


私は、登場人物の名前がカタカナの人がたくさん出てくるのが苦手。
19世紀に生きた主人公が使う難しい言葉達。漢字で書かれた国名。
どれもこれも、私が物語に入り込めない要素ばかりで、かなり困惑。
正直、半分読んで面白くなかったらそこでやめようと思いながら読んでいたのです。最初の4〜5章くらいまでは。
でも、いつのまにやら、全然気にならなくなりました。
オットーが、ディミトリスが、ムハンマドが、今ここで生きているかのように感じられたのです。
それぞれの思想が、ひたむきさが、共存しあえたひととき。
そしてそれを引き裂く戦争。
本当に大切な事は何?
いろんな事が私の胸の中で爆発するようなラストでした。
鸚鵡でなくとも「もう十分だ!」と叫びたくなる。
そしてこの物語が、私たちに託す物の存在もしっかりと感じ、本を閉じました。
「家守綺譚」を読んだ後に読むと、隠された繋がりもあって面白いかも。


村田エフェンディ滞土録
村田エフェンディ滞土録梨木 香歩

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2007年05月06日

春になったら苺を摘みに 梨木香歩

内容(「BOOK」データベースより)
「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。


私は、エッセイを読むのが苦手。今ひとつ訴えどころがわからないものが多くて共感の仕方がわからないから。
なのに買ってしまったのは、梨木香歩の書く物語の世界がどこから来るものなのか知ってみたかったというところだろうか。
でも、エッセイとしてというよりも、一つの物語として、この作品は完成度がとても高い。
誰かの考えを読まされるのではなく、著者が体験してきた出来事を、時を経て、著者の視線を+して、私たちが体験しているという感じ。
「受け入れる」ということ、「理解できないということを理解している」こと、その姿勢がしっかりと受け継がれているのがよくわかる。
この作品を読んだことで、その姿勢が私にも受け継がれると良いな、と思う。

春になったら苺を摘みに春になったら苺を摘みに
梨木 香歩

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2007年01月11日

家守綺譚 梨木香歩 ★★★

内容(「BOOK」データベースより)
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多…本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。―綿貫征四郎の随筆「烏〓苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。


すごい。
梨木さんの頭の中に、こんな世界があったのか。
物の怪だったり、幽霊だったりが、自分と同じ世界の中に、それぞれの社会を持って共存している。
そんな中で起こる色々な出来事、とりあえずありのままに受け止める主人公の強さと柔らかさ。
植物たちの名前とその描写から思い浮かぶ色や形がそれをサポートするようにして、読む人の心に刻んでいく。
ファンタジーというと、自分からものすごく離れた世界の出来事達が思い浮かぶけれど、
優しく美しい日本語と、古き良き日本の描写は、自分の心の中にそういった気持ちが存在していることを気付かせてくれる。
今まで読んだ梨木作品数作の中では、一番のお気に入りになったかも。


家守綺譚
家守綺譚梨木 香歩

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2006年04月10日

からくりからくさ 梨木香歩

内容(「BOOK」データベースより)
祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして―。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。

今を一生懸命に生きる4人に、運命の糸が絡み合う。現世を越えた絆。
ミステリアスだし、読み終えた直後はちょっと寒気がするくらい怖い感じもしたけれど、こうして数日経ってみると、あたたかな物語だったなぁという印象が残っているのは何故でしょう。
人は喪失によって何か新しいものを生み出す事ができるんだという、そんな強い思いもこめられているように思います。
4人それぞれの思いが例えば草花や、色合い、機を織る音といったもので巧みに表現されていて、文章なのに視覚に残る、そんな作品。

からくりからくさ
からくりからくさ梨木 香歩

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